共有物分割請求権と手続き

共有物分割請求権

民法256条1項本文は、共有物の各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができると定めており、この権利を共有物分割請求権といいます。

共有者の誰かが共有物分割請求の意思表示をしたときは、他の共有者は、その共有物の分割について協議し分割を実行する義務を負うことになります。

民法は、一つの物に対しては一つの所有権しかない状態を原則(「一物一権主義」)としており、その例外である共有関係の解消を促すために、共有物分割請求の規定があるものと考えられています。

共有物分割請求の制限

不分割の合意

ある不動産の共有者が、その共有物分割をしない旨合意(不分割合意)している場合には、共有物分割請求権の行使をすることができません。しかし、このような不分割の合意は、5年を超える期間を定めることはできないとされ、さらなる更新も5年までと定められています。このような規定もまた、民法が原則とする一物一権主義のあらわれといえるでしょう。

組合財産

共有物分割請求権は、共有者間の不分割の合意がある場合のほか、ある共有物が民法上の組合の組合財産に該当するという場合にも制限されます。これは、「組合員は清算前に組合財産の分割を求めることができない」という民法676条2項の規定によるものです。もっとも、組合員全員の合意があれば、このような制限は解除されるという古い判例もあります。

協議による共有物分割と裁判による共有物分割

協議による共有物分割

不動産共有者間の協議によってどのような共有物分割を行うかを合意できる場合には、その分割方法は基本的に自由に決めることができます。この場合、共有者間で合意した具体的な分割方法を、共有物分割協議書という書面にまとめ、各自が署名押印するのが通常です。

調停による共有物分割

共有物の分割に関する話し合いは、裁判所の調停手続きを利用して行うことも可能です。共有物分割調停では、裁判所の調停委員が共有者の間に入って当事者の要望を調整してくれます。話し合いが調った場合には、共有物分割協議書の代わりに調停調書を作成して解決となります。

裁判による共有物分割

共有物の分割について共有者間の協議が調わない場合には、その分割を裁判所に請求することができると定められており、この裁判を共有物分割訴訟といいます。例えば、兄弟で共有名義の土地を所有している場合に、その土地を売却してその代金を分けるか、兄が弟の持分を買い取るかで意見の調整が付かないようなケースや、そもそも兄が話し合い自体に応じないというケースがこれにあたります。

共有物分割訴訟における和解

実際の裁判実務においては、裁判所の助言や関与のもと、共有物分割請求訴訟の手続の中で、和解によって分割されるケースが多数あります。裁判上の和解であれば、協議による共有物分割と同様、基本的には当事者の意向に沿った自由な分割が可能です。

共有物分割の基礎知識

  1. 共有の法律関係
  2. 共有関係を解消する方法
  3. 共有物分割請求権と手続き
  4. 裁判による共有物分割の方法

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