立ち退き料の算定要素

立ち退き料は、一般的には次のような要素を積み上げて算出することになります。もっとも、立ち退き料の金額は、裁判では具体的事例における正当事由の充足度を勘案して算出されるため、必ずしも以下の項目の全てが認められるわけではありません。また、反対に以下の項目を全て支払えば正当事由が認められるというものではないことにご注意ください。

移転費用の補償

引っ越し費用

  • 賃借人等の引っ越しに必要となる費用
  • 引っ越し業者に依頼する場合の運送料など

新たな賃貸借契約のために必要となる経費

  • 移転先の賃貸人に支払うことになる権利金や礼金
  • 不動産業者に支払う仲介手数料
  • 敷金や保証金が、立ち退き前よりも高額となる場合のその差額など

移転雑費

  • 移転の通知に要する費用
  • 店舗や事務所であればホームページの改訂費用など

賃料差額の補償

立ち退き前の賃料と新たな賃料との差額に関する補償(ただし、新たな物件の方が優等なために賃料が高い分は除かれます。)

投下資本が回収できないことへの補償

借地上の建物の買取相当額

借地の期間満了による終了の場合に建物買取請求権が存在することに鑑みれば、地主の都合で契約が終了する場合にも同様に考えるべきでしょう。

借家内の造作の買取相当額

例えば、借家内で店舗営業を行っているような場合、入居時に相当高額な費用をかけて内装、造作等していることが想定されます。このような投下資本について減価償却もままならない時期に、賃貸人の都合で契約が早期終了することになったとすれば、その損失の補償を検討すべきと考えます。「移転先での内装費用を補償し、新しくなった分の利益を控除する」と考えるのと表裏の問題です。

営業補償

営業を廃止せざるを得ない場合

賃借人の営業内容の特殊性から、現在の物件を立ち退いた後、他の場所では継続できず営業の廃止を余儀なくされるという場合、営業廃止の補償が考えられます。

移転先で営業を継続する場合

現在の物件を立ち退いた後、移転先での営業継続が可能であったとしても、商圏の変更その他の事情により顧客減少等が懸念される場合、賃借人が移転により事実上失う利益の補償が考えられます。

営業再開までに休業が必要な場合

移転先での営業再開までに相当の準備などの関係上、一定の休業期間が必要とされるときには、移転に伴って必要となる休業期間の補償も含まれます。

借地権・借家権の補償

借地権については譲渡性があり、更地価格と借地権割合から、ある程度客観的な財産的価値が算定できますので、それをふまえて立ち退き料を考える指標となります。しかし、借家権については必ずしも算定が容易でなく、課税時の評価方法等はありますが、立ち退き料の指標としては参考程度にしかならないという考え方もあります。

その他

特に居住用不動産の場合には、場所を離れることによる地縁的、社会的変化に伴う精神的な損害の賠償も考慮に値すると考えます。また、立ち退き交渉の早期解決のための上乗せ分、早期解決することへの見返りというのも考慮要素になるでしょう。

立ち退き交渉の基礎知識:目次

  1. 建物賃貸借における賃貸人からの契約終了
  2. 借地における地主からの更新拒絶
  3. 正当事由と立ち退き料
  4. 立ち退き料の算定要素

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