占有移転禁止の仮処分とは | 家賃滞納

占有移転禁止の仮処分で確実な強制執行を担保

明渡しの強制執行は、物件の占有者(必ずしも賃借人とは限らない)に対して行う必要があります。これを逆からいえば、賃借人を相手に訴訟をして勝訴判決を得ても、賃借人とは別人が占有していて、強制執行ができないおそれもあるのです。また、訴訟提起時点の占有者に対して勝訴判決を得ても、訴訟中に他者に占有を移転されてしまうと、これもまた強制執行ができなくなります。
民事保全法に基づく占有移転禁止の仮処分は、そのような事態を回避するため、訴訟の相手方とすべき占有者を固定し(当事者恒定効)、その後に他者に占有が移転されても仮処分の執行時点の占有者に対する勝訴判決で強制執行を可能とするための手続です。
この手続を省略すれば、明渡しまでの期間短縮・費用の低減を図ることはできますが、強制執行が失敗に終わり訴訟が二度手間となるリスクは残ることとなります。占有移転禁止の仮処分が必要か不要かは、個別の事案の具体的事情により判断することになりますが、当事務所では、特に占有を移転される可能性が低い事情がある場合を除き、占有移転禁止の仮処分を行うことをお勧めしています。

占有移転禁止の仮処分の必要性が高い場合

占有移転禁止の仮処分の要不要は各事案ごとの具体的な事情によって判断することになります。ただし、例えば次のような事情がある場合には、明け渡し訴訟に先立ち占有移転禁止の仮処分を取得しておくことを強くお勧めします。

  • 個人に貸したにもかかわらず賃貸物件で法人が営業を行っている
  • 賃貸物件に複数の表札が掲げてある
  • 賃貸物件に不動産オーナーが知らない人がよく出入りしている
  • 賃借人と全く連絡がとれない

占有移転禁止の仮処分の流れ

占有移転禁止の仮処分の手続きは、占有移転禁止の仮処分命令を取得する裁判手続きと、その執行手続きを経て行います。大まかな手続きの流れは以下のようになります。

  1. 保全命令(占有移転禁止の仮処分命令)の申立
  2. 債権者審尋(裁判所によっては省略されることもあります)
  3. 担保決定
  4. 供託金の納付
  5. 保全命令(占有移転禁止の仮処分)の発令
  6. 保全執行の申立・予納金納付
  7. 執行官による保全執行

家賃滞納による明け渡しの基礎知識:目次

  1. 家賃滞納による賃貸借契約の解除
  2. 家賃滞納による建物明渡しの手続き
  3. 任意の明け渡しについて
  4. 弁護士に頼むか自分でやるか
  5. 占有移転禁止の仮処分
  6. 家賃滞納の弁護士費用・裁判費用

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