家賃滞納の弁護士費用・裁判費用

家賃滞納を理由とした立ち退きを求める場合の弁護士費用その他の費用について説明します。賃借人に建物明け渡しを求める裁判を起こし、その後強制執行までする場合、大きく分けて次のような費用(コスト)が発生します。以下では、各項目ごとに、費用の内容についての解説と、おおよその目安を解説します。

1 家賃滞納の弁護士費用

1 弁護士費用の決定方式

かつては、日本弁護士連合会が作成した統一的な弁護士報酬基準(以下「旧基準」といいます。)がありました。しかし、平成16年4月以降、弁護士報酬基準は自由化され、現在では各法律事務所によって異なる基準を用いることが可能となりました。現在では、「着手金・報酬金方式」、「手数料方式」、「完全成功報酬方式」、「タイムチャージ方式」のいずれかが用いられることが多いようです。以下、ご説明します。

着手金・報酬金方式

「着手金」と「報酬金」の両方が発生する方式で、最も一般的な計算方式です。「着手金」とは、弁護士が事件処理に着手する時点で発生する費用です。成功・不成功・回収額にかかわらず発生します。また、「報酬金」は、事件処理の結果、得られた結果に応じて発生する費用です。例えば、「明渡を実現した場合には、・・・万円」、「判決または和解によって認められた賃料債務額の・・・%」といった計算式が用いられることがあります。

手数料方式

例えば、内容証明郵便1通の作成など、1回ごとの事務処理に応じて、費用を計算する方式です。この場合、基本的には文書1通の作成のみにより、一旦、ご依頼の案件処理は完結します。そのため、相手方の反論などをうけて、代理人弁護士による交渉が必要になった場合には、別途、弁護士(弁護士法人)との委任契約を締結する必要があります。委任の範囲に注意しておくべきでしょう。

完全成功報酬方式

着手金が発生せず、成功報酬のみによって弁護士費用を計算する方式です。何らかの成果が得られない限り費用負担がないという点は大家様にとってメリットですが、その分成功報酬が着手金・報酬金方式に比べると割高に設定されることもあります。

タイムチャージ方式

事件処理に要した作業時間に応じて、弁護士費用を計算する方式です。例えば、「1時間あたり3万円、作業時間が10時間」というケースでは、弁護士費用は、3万円×10時間=30万円、という計算になります。

2 当事務所における家賃滞納の弁護士費用

当事務所で家賃滞納を理由とした建物明け渡し請求事件(立ち退き請求事件)をご依頼いただく場合の弁護士費用について説明します。もっとも、以下の内容はあくまで目安ですので、事案の複雑性や難易度などによって異なることがあります。具体的な金額は、個別の法律相談の内容などを踏まえて、無料でお見積りさせていただきますのでお気軽にご相談ください。

法律相談は無料です

家賃滞納により建物の明け渡しを求めるケース、付随して滞納家賃を請求するケースについての法律相談料は原則無料です。

原則として着手金・報酬金方式を採用しています

当弁護士法人が代理人となって滞納家賃や明渡を請求する場合、基本的には「着手金・報酬金方式」により、ご依頼を受けております。当弁護士法人は、以下のような「着手金・報酬金方式」を基本としつつ、個別の事実関係、ご相談内容等をふまえ、お見積もりを提示しております。

着手金について

賃料の半月~2か月分(税別)となります。ただし、着手金の最低額は、15万円(税別)となります。

報酬金について

賃料の1か月~3か月分(税別)となります。ただし、報酬金の最低額は、20万円(税別)となります。

なお、不動産管理会社様、家賃保証会社様など、複数のご依頼が見込まれるお客様の場合、一定の割合料金でのご依頼が可能となることがありますのでお問い合わせください。

3 弁護士費用算定の考慮事情について

弁護士費用の算定にかかわる減額・増額事由としては、例えば、次のような事情が挙げられます。家賃滞納事件の弁護士費用に関しては一律の料金を提示する法律事務所もありますが、当事務所では、こうした事情の有無を考慮して事案の難易に応じた弁護士費用のご提案をさせていただきます。

  • 契約内容は明確となっているか
  • 契約書等の関係書類が揃っているか
  • 賃料の不払期間は不明でないか(充当関係は明確か)
  • 物件占有者の状況に不明瞭な点がないか
  • 占有移転の仮処分は必要か
  • 契約者(賃借人)以外の占有が伺われるような占有関係の調査は必要か
  • 強制執行に至る可能性は高いか
  • 本人や代表者の所在が明確であり書類の送達に困難はないか

2 裁判費用・強制執行費用等

家賃滞納のケースでは、弁護士費用のほか、裁判所に納める費用、法務局に供託する費用など、様々な費用が発生します。 以下では、弁護士費用以外の主な裁判費用・強制執行費用等実費について、ご説明します。

1 内容証明郵便にかかる費用

家賃滞納による建物明け渡し請求事件では、まず始めに内容証明郵便により滞納家賃の督促や契約解除の通知をすることが通常です(なお、内容証明に関するその他の解説はこちらをご覧ください。)。この内容証明郵便の発送のために、1通あたり、1500~3000円程度かかります(文字数・枚数等により異なります)。

2 裁判費用

任意交渉による退去がなされない場合には、裁判所に建物明け渡し請求訴訟を提起して判決を求めることになります。その際、弁護士費用とは別途必要となる経費として、以下のようなものがあります。なお、印紙代や郵便切手代などについては、判決で不動産オーナーが勝訴した場合にはテナント側の負担とすることができますが、実際には回収が困難な場合が多くあります。

印紙代

印紙代は、訴額により異なります。 建物明渡請求訴訟の場合には、目的不動産の固定資産評価額の2分の1(ただし、土地については当面の間4分の1)を訴額として、所定の計算表に当てはめて、印紙代が決定されます。 例えば、 訴額500万円の場合、印紙代は3万円 訴額1000万円の場合、印紙代は5万円 となります。

切手代

裁判所や被告の人数等によって異なります。 例えば、東京地方裁判所で、原告1名、被告1名の訴訟を提起する場合、6000円の郵券が必要となります。

登記事項証明書などの取得費用

不動産の権利関係や評価額を調査するため、不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書を取得することがあります。 登記事項証明書1通あたり500円程度、固定資産評価証明書1通あたり400円程度の実費が必要となります。

3 強制執行費用

明渡の強制執行申立にあたり、裁判所の執行官に収める費用として、予納金6万5000円程度が必要となります。 明渡の強制執行と併せて、建物内に生活用品以外に価値のある動産、例えば、美術品、宝石等がある可能性が高い場合には、動産差押えを併せて申立することもあります(生活用品の多くは差押禁止とされています。)。 建物内の動産を差押えする場合には、予納金4万円程度が必要となります。

4 執行補助業者費用

執行官は、自分自身で物件の解錠作業や物件内に置かれた動産類の移動作業を行うわけではありません。こうした作業を行うためには、執行補助業者とよばれる各作業を行う民間の事業者に依頼することになります。このため、強制執行を実施する際には、こうした執行補助業者に支払うべき費用として、人件費、廃棄費用、倉庫費用、解錠費用などが発生することが通常です。

人件費

執行補助業者を明渡催告時に同行し、明渡断行の際にかかる人件費の見積を作成してもらうことがあります。 執行業者費用は、残置物の分量等によっても異なりますが、ワンルームの場合10万円程度、一般家庭の場合30~50万円程度が目安となります。事務所や店舗の場合には、面積はもちろん、目的物件内の残置物も様々ですので、個別に判断する必要があります。

廃棄費用

執行官は、目的外の動産を取り除いて、債務者やその親族等に引き渡さなければなりませんが(民事執行法168条5項)、債務者等が引き取らない場合には、廃棄・処分の費用が必要になります。 廃棄物の分量・内容等によって異なりますが、一般家庭の場合、3~4万円程度が多く見られます。これも事務所や店舗の場合には一概に判断することが難しいです。

倉庫費用

売却可能な動産が残置されている場合、倉庫で一定期間保管した後、売却することがあり、保管期間・保管分量に応じた倉庫費用が発生することがあります。 なお、債権者(賃貸人)が明渡断行の場で買い取ることができる場合もあります(民事執行規則154条の2第2項)。

解錠費用

債権者(賃貸人)が鍵を保有しておらず、かつ、債務者(賃借人)不在の可能性がある場合などには、解錠業者に同行してもらうのが通常です。 解錠業者の費用も業者等によって異なりますが、1回あたり2万円程度が通常です。

3 供託金(占有移転禁止仮処分)について

建物明渡等請求訴訟の提起に先立って、占有移転禁止の仮処分を申し立てる場合、担保を供託する必要があります。 供託金は、債務者(賃借人)による使用を前提とする場合、適正賃料の1~5か月分とされるのが通常です。 仮処分後の本案訴訟を経て、債権者勝訴の確定判決を獲得した場合などには、裁判所の担保取消決定を得て、供託金を取り戻すことができますので、家賃滞納による明け渡しの事案では、例外的な場合を除き、取り戻すことが可能です。

家賃滞納による明け渡しの基礎知識:目次

  1. 家賃滞納による賃貸借契約の解除
  2. 家賃滞納による建物明渡しの手続き
  3. 任意の明け渡しについて
  4. 弁護士に頼むか自分でやるか
  5. 占有移転禁止の仮処分
  6. 家賃滞納の弁護士費用・裁判費用

法律相談のご予約はこちら

メールでのご予約

  • お問い合わせフォームへ